エリア峠付近から、日本海に沈む壮大な夕日を望む。 撮影/1997・8・21


 日本最北端の島、礼文。名前の由来はアイヌ語のレプンシリで、「沖の島」を意味する。礼文島唯一の湖である久種湖(周囲四キロ、平均深度三・五メートル)は、アイヌ語で「山越えする沼」の意。エリア峠という低山を越えた所にある。久種湖には、フナ、アメマス、ワカサギなどが生息し、冬にはハクチョウやマガモなどがやって来る。湖岸にはミズバショウが群生する。
 昔、海に面した小さな湖に、イコツポとヌプリという働き者のふたりの若者が住んでいた。ふたりは仲良く漁をして暮らしていたが、いつしかともにコタン(村)の酋長オテナの娘エリアに恋心を抱きはじめる。
 酋長オテナが、漁の多いイコツポに好意を示したこともあって、やがてふたりの間には冷たい風が吹きはじめる。美しいエリアをめぐる対立は、漁場争いも重なって、ついには海岸での決闘に発展してしまう。
 エリアも勝ったほうにすべてを許すと約束したため、ふたりは武器をもって砂浜で決着をつけることに……。
 激しい闘いのすえに敗れたのは、イコツポだった。
「エリア、愛してくれ」とイコツポが言い遺して果てたとき、突然大暴風が起こって、漁場はたちまち砂に埋もれてしまう。
 漁場を失い、大切な友を喪った悲しみに気づいたヌプリもまた、その場に倒れた。
 ただひとり残されたエリアは、悲嘆のあまり喉を突き、ふたりのあとを追った。三人が折り重なって死んだ場所に、やがて久種湖ができたといわれる。


◇礼文島へは、稚内港からフェリーで約二時間。稚内空港から礼文空港へ毎日二便小型機が出ているが、悪天候による欠航も多い。島内の移動はバス、タクシー、またはレンタカーで。香深から周遊観光バスも運行されている。